食品衛生法に基づく食品表示について

目次

はじめに

今、一流ホテルや百貨店を始めさまざまなところで食品表示偽装の問題が起こっております。食品表示食品の表示は、万が一事故が生じた場合に、原因究明や製品回収等の措置を迅速かつ的確に行うための手がかりとなります。また、消費者が食品を購入する際、食品の内容を正しく理解し、選択するうえでの重要な情報となります。そのため、食品表示の基本的なルールを理解することは、非常に重要なことと言えます。

表示記載事項について

食品衛生法上、一般に販売されている加工食品のうち、パック・缶などの容器や袋などで包装された食
品は①「名称」、②「食品添加物」、③「アレルギー物質」、④「遺伝子組換え食品」、⑤「消費期限(賞味期
限)」、⑥「保存方法」、⑦「製造者」等を表示しなければなりません。
この他にも、食品の品目により表示しなければならない項目もあります。
例)冷凍食品、加熱食肉製品等

 食品衛生法に基く表示記載事項の原則

(1)基準に合う表示のない食品等を、販売したり、販売のために陳列したり、また営業上使用することはできません。(このことは、製造者のみならず販売者等にも適用されます。)
(2)表示は邦文で、理解しやすい用語で正確に行います。また、包装を開かないでも容易に見られるよう表示することが必要です。(使用する活字の大きさは、原則として8ポイント以上です。)
(3)公衆衛生に危害を及ぼすような虚偽あるいは誇大な表示等は行えません。

名称

(1)食品の内容を的確に表現し、かつ社会通念上すでに一般化したものを記載してください。名称中に主要原
材料名を用いる場合には、主要原材料と一致するように表記しなければなりません。なお、名称とすべき
主要な原材料が2種類以上混合している場合には、1種類の原材料名のみを名称とすることは認められ
ません。
(2)新商品等で、業界内でも、未だ名称が広く通用しない食品は、社会通念上どんな食品であるか判断できる
ものであれば、それが名称と認められます。
また、珍味等のように魚介類加工品、菓子、その他広範囲の区分にまたがる食品では、「珍味」のみでは、
食品の内容を適切に表さないので、名称とは認められません。この場合は、「珍味たこくん製」等と必ず食品
の内容を適切に表す具体的な名称を表示します。但し、それらを複合したいわゆる「おつまみ」等、固有の
名称もなく、食品の区分も不可能な場合は、「珍味」の名称が認められます。
(3)冷凍食品は、名称のほか、「冷凍食品である旨」を表示します。

食品添加物

原則として、容器包装に入れられた加工食品は、使用した添加物や原材料に含まれる添加物を全て表示します。但し、ビタミン類等の栄養強化を目的として使用されるもの、「加工助剤」及び「キャリーオーバー」については、表示が免除されます。

○食品添加物の具体的な表記方法
表示の方法は「物質名」での表示を原則としますが、馴染みがなく逆にわかりにくくなる場合もありますので、
できるだけ分かりやすく表示するよう、「簡略名」、「類別名」、「一括名」での表示も認められています。
また、公衆衛生上の観点から見て、必要性が高いと考えられるものについては、「用
途名」を併記する必要があります。
※調味料は、アミノ酸・核酸・有機酸・無機塩の4グループに分類され、一括名で記載できますが、そのグル
ープ名を( )内に表記することになっています。

○簡略名・類別名について
添加物の物質名、簡略名及び類別名については、「食品衛生法施行規則別表第1」及び「食品衛
生法に基づく添加物の表示方法について(厚生省通知)」に記載されています。簡略名の例としては、
次のようなものがあります。
具体例)
物質名 簡略名、類別名
炭酸水素ナトリウム 重曹
食用赤色102号 赤色102号、赤102
L-アスコルビン酸 アスコルビン酸、V.C

○用途名の併記について
保存料や甘味料等の一部の添加物は、消費者への情報提供を目的として、その用途名も併せて表示する必要があります。例えば「甘味料(サッカリンNa)」のように、用途名と物質名を表示します。用途名を併記しなければならない添加物の種類は次のとおりです。
(食品衛生法施行規則別表第5)
1 甘味料
2 着色料
3 保存料
4 増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料
5 酸化防止剤
6 発色剤
7 漂白剤
8 防かび剤又は防ばい剤

○一括名について
添加物表示は、個々の物質名を表示するのが原則ですが、次の14 種類の用途で使用する場合に
は、使用の目的を表す「一括名」で表示することが認められています。一括名で記載できる添加物の
種類は次のとおりです。
(食品衛生法施行規則別表第8)
添加物の種類
イーストフード ガムベース
かんすい 苦味料
酵素 光沢剤
香料 酸味料
チューインガム軟化剤 調味料
豆腐凝固剤 乳化剤
pH 調整剤 膨脹剤

「キャリーオーバー」とは、食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ当該食品の製造又は加工の過程において使用されないものであって、当該食品中には当該物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないものをいいます。
「加工助剤」とは、食品の加工の際に添加される物であって、次の事項に該当するものをいいます。
①当該食品の完成前に除去されるもの。②当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるもの。

アレルギー物質

食物アレルギーの患者は、アレルゲンとなる食品を食べないことが通常時の治療法として重要です。しかし、加工食品では、アレルギー物質が含まれているかどうかは食品の外観のみでは判断できません。そこで、食物アレルギーの患者が食品を選ぶ手がかりとすることができるよう、特にアレルギーを起こしやすい5品目の食品(特定原材料)については、表示をすることが義務付けられました。詳細については、次のとおりです。
表示 アレルギー物質の名称 理由
義務
卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに 症例数が多いものや症状が重篤であり生命に関
わるため、特に注意が必要なもの。
推奨
あわび・いか・いくら・オレンジ・キウイフルーツ・牛
肉・くるみ・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・ま
つたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン
症例数が少なく、表示を義務化するには、今後さ
らに調査が必要なもの。

○アレルギー物質の具体的な表示方法について
具体的な表示方法は次のとおりです。
①個別にアレルギー表示を行う方法
②最後に一括でアレルギー表示を行う方法
名称:焼肉のタレ
原材料:しょうゆ(小麦を含む)、砂糖、たまねぎ、ト
マト、にんにく、ごま油、とうがらし、黒こしょう、グ
ルタミン酸ソーダ、保存料(安息香酸ソーダ)
名称:麺つゆ
原材料:しょうゆ、かつおぶし、こんぶ、アミノ酸
液、砂糖、塩、(原材料の一部に小麦を含む)

○代替表記、特定加工食品について
アレルギー表示は、限られた表示枞内のスペースに行うため、原材料の表記内容からアレルギー物質が含まれていることが一般的・常識的に連想できるものについては、アレルギー物質が表示されていると認められています。具体的には、「代替表記」「特定加工食品」という2 つの表記があります。
代替表記 表記方法が異なるが、特定原材料と同一であると理解できる表記
特定加工食品
①特定原材料名又は代替表記を含んでいるため、これらを用いた食品と理解できる表記
②特定原材料名又は代替表記を含まないが、一般的にこれらを用いたことが理解できる表記
③②の表記を含むことにより、特定原材料を用いた食品であることが理解できる表記
(代替表記と特定加工食品の例)
特定原材料名 代替表記の一例
特定加工食品の一例
① ② ③
卵 玉子・たまご・エッグ 卵黄・卵白 マヨネーズ・オムレツ からしマヨネーズ
小麦 こむぎ・コムギ 小麦粉・こむぎ胚芽 パン・うどん ロールパン
そば ソバ そばがき
落花生 ピーナッツ ピーナツバター
乳 牛乳・バター・チーズ ブルーチーズ ヨーグルト フルーツヨーグルト

遺伝子組み換え食品

平成13年から、食品衛生法により遺伝子組換え食品の表示が義務付けられました。表示対象となる食品の詳細については、次のとおりです。

作物 加工食品
大豆( 枝豆及び大豆もやしも含む)
①豆腐類及び油揚げ類、②凍豆腐・おから及びゆば、③納豆、④豆乳類、⑤みそ、⑥大豆煮豆、⑦大豆缶詰及び大豆瓶詰、⑧きな粉、⑨大豆いり豆、⑩①~⑨までに掲げるものを主な原材料とするもの、⑪調理用の大豆を主な原材料とするもの、⑫大豆粉を主な原材料とするもの、⑬大豆たんぱくを主な原材料とするもの、⑭枝豆を主な原材料とするもの、⑮大豆もやしを主な原材料とするもの
とうもろこし①コーンスナック菓子、②コーンスターチ、③ポップコーン、④冷凍とうもろこし、⑤とうもろこし缶詰及びとうもろこし瓶詰、⑥コーンフラワーを主な原材料とするもの、⑦コーングリッツを主な原材料とするもの(コーンフレークを除く。)、⑧調理用のとうもろこしを主な原材料とするもの、⑨①~⑤までに掲げるものを主な原材料とするもの
ばれいしょ
①ポテトスナック菓子、②乾燥ばれいしょ、③冷凍ばれいしょ、④ばれいしょでん粉、⑤調理用のばれいしょを主な原材料とするもの、⑥①~④までに掲げるものを主な原材料とするもの
菜種
綿実
アルファルファ アルファルファを主な原材料とするもの
てん菜 調理用のてん菜を主な原材料とするもの
パパイヤ パパイヤを主な原材料とするもの
○遺伝子組換え食品の具体的な表示方法について
遺伝子組換え食品の表示方法は、次の3つに分けられます。
①分別生産流通管理が行われた遺伝子組換え食品(義務表示)
②遺伝子組換え食品と非遺伝子組換え食品の分別生産流通
管理が行われていない(義務表示)
③分別生産流通管理が行われている非遺伝子組換え食品
(任意表示)
名称:もめん豆腐
原材料:丸大豆(遺伝子組換え)、豆腐凝固剤
名称:もめん豆腐
原材料:丸大豆(遺伝子組換え不分別)、豆腐凝固剤
名称:もめん豆腐
原材料:丸大豆(遺伝子組換えでない)、豆腐凝固剤

※分別生産流通管理について
遺伝子組換え食品及び非遺伝子組換え食品を生産、流通、加工の各段階で善良な
る管理者の注意をもって分別・管理を行い、その旨を証明する書類により明確にした管
理のことをいいます。
※遺伝子組換え食品が主な原材料となっていない食品の表示について
全原材料中重量が上位3位内かつ、食品中に占める重量が5%以上のものに限り表示が
義務化されています。

遺伝子組換え食品の開発や実用化は、近年、国際的にも急速に広がってきており、今後さらに新しい食品の開発が進むことも予想されるため、安全性審査がされていないものが国内で流通しないよう、食品衛生法の規格基準が改正され、安全性審査について法的に義務化されました。
これにより、平成13年4月1日から、安全性審査を受けていない遺伝子組換え食品は、輸入、販売等が法的に禁止されています。また、平成15年7月1日に食品安全基本法が施行され、内閣府に食品安全委員会が発足したことに伴い、遺伝子組換え食品の安全性審査は食品安全委員会の意見を聴いて行うこととなっています。

消費期限、賞味期限

期限の設定は、食品等の特性、品質変化の要因や原材料の衛生状態、製造・加工時の衛生管理の状態、保存状態等の諸要素を勘案し、保存試験等の結果から、科学的、合理的に行う必要があるため、基本的には、その食品の製造者(輸入食品にあっては、輸入業者)が期限の設定を行います。

○具体的な期限表示の方法について
具体的な表示方法は、次のとおりです。また、弁当の類は、必要に応じて時間まで記載するようにしましょう。
期限表示は、原則として、賞味期限・消費期限である旨と、年月日を記載します。
「消費期限 平成7年4月1日」「賞味期限 7.4.1」「消費期限 07.04.01」
「賞味期限 1995年4月1日」「消費期限 95.4.1」「賞味期限 95.04.01」
但し、これらの表示が困難な場合は、「消費期限 070401」「賞味期限 950401」のように年・月・日をそ
れぞれ2桁(西暦年の場合は末尾2桁)とする6桁で記載することが認められています。
なお、上記方法による表示方法が原則となりますが、これらの表示方法が困難となる場合は、消費期限又は賞味期限である旨の文字を年月日の上下若しくは後ろ等に近接して記載するか、「消費期限○○に記載」等の期限記載箇所を具体的に指定する方法で、年月日を単独で記載する方法もあります。

「消費期限」とは、品質が劣化しやすく、品質が急速に劣化する食品に表示する期限表示の用語であり、容器包装を開封する前の期限を示すものです。
「賞味期限」は、「消費期限」に比べ、品質が比較的劣化しにくい食品等に表示する期限表示の用語であり、「消費期限」と同様、容器包装を開封する前の期限を示すものです。但し、賞味期限の定義において
、この期間を超えた場合であっても、その食品の品質が保持されていることがあるとされてい
ます。つまり、この期間を超えた場合でも、必ずしも食べられなくなるわけではありません。

厚生労働省では、平成17年に農林水産省と合同で期限設定の基本的な考え方について、
「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を策定し、全国に示しました。
このガイドラインには、期限設定のための代表的な試験(理化学試験・微生物試験・官能検査)
の概要や食品の特性に応じ、設定された期限対して、1未満の係数(安全係数)をかけて、試験
結果より得られた期限よりも短い期間を設定すること及び特性が類似している食品に関する期限
設定等、食品の期限設定に関する基本的な考え方が記載されています。

保存方法

保存方法は、食品の品質を保つために必要な一定の方法を具体的に記載します。また、記載方法について
は、期限表示に出来る限り近接して記載するようにしましょう。表記方法としては、摂氏十度以下で保存する場合は、「保存温度10℃以下」、「4℃以下で保存」などのように記載します。また、食品衛生法では、保存方法が基準で定められた食品がありますが、保存基準が定められていない場合、常温で保存する旨の表示は省略することができます。
なお、製造又は加工後流通段階で適切に保存方法を変更したものであって、期限表示の期限の変更が必要となる場合には、改めて適切に期限及び保存方法の表示を行ってください。

製造者氏名、製造所在地

製造者が法人の場合、製造者氏名は法人名を記載します。また、製造者が個人の場合は、個人の氏名を記
載します。個人の場合、屋号等を製造者氏名として記載することは認められません。なお、輸入食品の場合は、製造者氏名の代わりに輸入業者氏名を記載します。
製造所所在地の表示は、住居表示に関する法律に基づく住居表示に従って住居番号まで記載します。但し、地方自治法に基づく指定都市及び県庁の所在する市における都道府県名は省略することができます。また、同一都道府県内に、同一町村名がない場合に限り、郡名を省略することができます。なお、輸入食品にあっては、製造所所在地の代わりに輸入業者の営業所所在地を記載します。

製造者氏名・所在地の代わりに、あらかじめ厚生労働大臣に届け出た製造所固有の記号「固有記号」の記載による例外的な表示方法が認められています。
①本社とは異なる所在地の自社工場で製造した食品に本社名称、所在地を表示したい場合は、製造所固有記号の表示により、自社工場の所在地に代えて、本社の所在地を表示できます。
②製造を他社工場(製造所)に委託している販売者が、自社の名称、所在地を表示したい場合は、
製造所固有記号の表示により、委託先他社工場の名称、所在地に代えて、販売者の名称、
所在地を表示できます。ただし、その際に表示する販売者の名称、所在地は本社とします。

○固有記号の表示枠外への表記方法
固有記号の表示は、製造者又は販売者名の次に連記することが原則ですが、容器包装
の形態等から判断してやむを得ず連記できない場合は、製造者又は販売者名の次に記号
の記載場所を明記し、かつ、原則として、当該記号が製造者固有の記号である旨を明記
します。なお、固有記号であることが明らかに判る場合は、次のような記載方法が認められ
ています。

(表示部分)
「製造所固有の記号 缶底左側に記載」
(記載部分)
「ABC」
○固有記号を用いた製造者又は販売者の表記方法について
①製造所所在地に代えて本社所在地を記載する場合は、次のとおりです。

製造者 埼玉県川越市○×町△―□―▼ (製造者の本社住所)
川越太郎株式会社 KTK
(製造者氏名) (製造者の自社工場の固有記号)
②製造者氏名・製造所所在地に代えて販売者として表示する場合は、次のとおりです。
なお、製造所固有記号に使える文字は、アラビア数字、ローマ字、ひらがな、カタカナとなります。

販売者 埼玉県川越市△■町○―▼―× (販売者の本社住所)
衛生川越株式会社 EKK
(販売者氏名) (製造者の自社工場の固有記号)