生分解性プラスチックフィルム

生分解性プラスチックの世界需要は、5万トン強と見積られておりますが、その半数以上がドイツを中心とした西欧での需要となっております。有機性廃棄物の埋め立ての法的規制があるドイツでは、多くの台所や庭の有機性廃棄物がコンポスト(堆肥)としてリサイクルされており、コンポストの普及とともに、有機性廃棄物と一緒に処理が可能な生分解性コンポスト袋の需要も高まっております。また、コンポスト袋として生分解性プラスチック以外のプラスチック袋を使用した場合には高い税金を課したりする生分解性プラスチックの優遇政策などが効いて、西欧では、生分解性プラスチックの用途として、バラ状緩衝材と並んでコンポスト袋の需要が大きく、コンポスト袋は、全体の需要の三分の一ほど占めています。
 国内においては、例えば、北海道の富良野市で生分解性コンポスト袋を使用して各家庭からの有機性廃棄物を処理するコンポストの操業が古くから行われており、いくつかの他の地方自治体も富良野方式を取り入れていますが、多くの自治体でのコンポストシステムの採用はまだ散発的にとどまっており、生分解性コンポスト袋の需要は、期待の割に伸びていないのが現状です。
 一方、生産・流通段階では大量の食品が廃棄されており、食品産業から排出される食品廃棄物は年間約1,100万トンに上っており、また、消費段階でも大量の食べ残しが発生しており、これらの食品廃棄物の処理が大きな問題となっております。食品廃棄物の環境に与える影響が大きいため、環境への負荷を軽減しながら持続的な発展ができる循環型社会の構築を目指して、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(「食品リサイクル法」)が2001年5月に施工されています。食品リサイクル法では、施工から5年が経過する年度までに、当該年度において発生する食品廃棄物の最低20%について、再生利用等による排出抑制を図ることが目標とされており、2006年度中に目標を達成することが求められております。このため、外食産業やスーパー、コンビニなどが食品廃棄物をコンポスト化することにより、ゴミの再利用の実施率を向上させることが期待されております。

 国内の生分解性プラスチックでは、1998年まではコンポスト袋が市場をけん引しておりましたが、1999年からマルチフィルムや育苗ポットなどの農林土木資材に移っており、生分解性マルチフィルムは、農業用の最も大きい用途になっております。
 野菜や葉タバコの農業用マルチフィルムは、保温や雑草抑制などの効果があり、生産性の向上に欠かせない農業資材として全国的に普及しておりますが、使用後の回収や廃棄物処理に多大な労力が割かれており、特に、農家の高齢化が進んでいる状況下では、役割を終えたマルチフィルムを片付けるのは高齢者の場合が多く、年々作業の負担が大きくなる問題を抱ええております。このため、使用後にすき込むだけで分解され、フィルムの除去作業や産業廃棄物としての処理が不要で、農作業の省力化と環境にやさしい農業の推進が図れる資材である生分解性マルチフィルムを導入する産地が増えております。現在、生分解性マルチフィルムの価格が通常のポリエチレン製に比べてまだかなり高いため、普及率はマルチ利用面積の1?2%程度に止まっておりますが、価格の低下とともに生分解性マルチフィルムの需要が大きく増えるものと期待されています。一方、生分解性マルチフィルムを環境保全型農業の支援資材と位置付け、行政が生分解性のマルチフィルムに助成する動きも出ております。また、農林水産省の「バイオマス利活用フロンティア推進事業」では、農業用プラスチックの排出量を抑制する生分解性マルチフィルム導入による生産方式の実証試験を補助し、農業用プラスチックの適正処理を促進させるプロジェクトを推進しております。

 その他、生分解性プラスチックの包装材料用途として、ピロー包装・ブリスターバック・ラミネート包装などの各種フィルム用途にも使用されており、窓付き封筒(現行二軸延伸ポリスチレンフィルム使用)への用途進展動向などが注目されています。

参照:三菱化学