ナイロン(PA)

一般に、酸とアミンが反応してできるアミド結合をもつ高分子化合物の総称をポリアミド(またはナイロン)と呼んでいます。ナイロンは、ポリアセタール、ポリカーボネートなどとともにエンジニアリングプラスチック(高性能)に分類されます。
 1931年に米国デュポン社のW.H.Carothersらによって発見されたのが始まりで、日本では1951年、東洋レーヨン(株)(現東レ(株))によって初めて工業化されました。
 現在市販されているナイロンは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン46(数字はモノマー中の炭素数を表わします)などに大別されますが、最近は耐熱性の高い芳香族ナイロンや非晶質ナイロンも実用化されています。それらがさらに変性されたり、ガラス繊維やミネラル粒子、他のポリマーとの複合化で強化されたものが数多くあります。
 前述のとおり、ナイロンは主鎖中にアミド結合という強い極性基を有し、このアミド結合間の水素結合による分子間力が大きいこと、末端にアミノおよびカルボキシル基という反応性の高い官能基を有することから、種々の環境下でも機械的強度の安定性が高く、また各種添加剤、補強材、異種ポリマーの配合がしやすいという利点を有しています。また、ナイロンは吸水により、引張り強さや曲げ強さは低下しますが、柔軟性が増し、衝撃強さが向上するという特性を持っています。
 押出成形、射出成形、ブロー成形されたナイロン成形品は、機能部材として各種工業用途に使用されていますが、食品に直接接触する「器具」として使用されることはあまりありません。容器包装用には、ポリオレフィンとラミネートしたナイロン、共重合ナイロン(複数の種類のナイロンを化学的に結合したもの)が多用されています。酸素を通しにくいこと、袋に穴があきにくいこと、落袋強さが高いことから、最も信頼性の高い包装用フィルムとされており、重量物、水物、真空包装品、インスタントラーメンの液体スープ用等広い範囲に使用されています。
 更に比較的耐熱性が良いことから、ハンバーグ等のボイル殺菌食品やレトルト食品の包装材料として、また、低温における機械的強度が高いことから、冷凍・冷蔵食品の包装材料としても用いられています。
 食品用途以外では、自動車用のガソリンタンク・ラジエータタンク、吸気部品等に使用されているほか、電気・電子部品であるコネクタ、電気開閉器、ブレーカ、電線被膜や、その他、建設資材や椅子の脚、歯ブラシ、スポーツ用品などあらゆる分野で用いられています。
 芳香族ナイロン(主鎖中にベンゼン環が含まれるもの)は、通常のナイロンに比較してさらに優れた耐熱性や耐薬品性を有し、また低吸湿性であることから、自動車用冷却水系部品、表面実装用部品等、新しい用途が広がりつつあります。 

参照:ポリ衛協